「難しい数学の計算ができる」「難しい国語の問題が解ける」などといった、知能の高さ、つまり「認知能力」が将来社会で活躍できる人になれるかどうか影響を及ぼす……
このような考え方があります。
これに基づき、お子さんに幼い頃から習い事や勉強をさせる保護者の方もたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、今日、最先端の脳科学や教育科学の分野では、このような考え方に対して疑問を投げかける声が上がっています。
そして、代わりに大きな注目を集めているのが「非認知能力」と呼ばれるものです。
「非認知能力」とは、知能とは関係のない、人間性そのものの能力のこと。
例えば、「粘り強さ」「自制心」「やりぬく力」などがそれに当たります。近年では、「認知能力だけではなく非認知能力を高めることが、社会での活躍に繋がる」という考え方が主流になってきています。
保護者の方なら誰しも、お子さんには社会的な成功を手にして有意義な人生を送ってほしいと願うもの。
そこで今回は、今注目の「非認知能力」についてご紹介します。
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認知能力主義教育によって生じたゆがみ
1994年、アメリカでは、人種間における経済格差によって生じる学力格差是正のために「KIPPーKnowledge is Power Program(“知は力なり”プログラム)―」という初等中等教育学校が設立されました。
ここでは、厳格な規律のもとに一般的な公立学校の1.5倍の授業時間を設けるなど、社会的な成功を手にするための高い学力獲得が目指されていました。いわば認知能力至上主義ともいえるここでの教育は、ある面では非常にうまく機能していました。
設立から5年後の1999年の時点ですでに大きな成果を上げており、この年には、同校の生徒たちがニューヨーク全市統一学力テストでトップレベルの成績を収めています。
これは、入学時に成績を問わない貧困層の学校としては前代未聞の出来事。様々なメディアでその快挙が大きく取り上げられるほどでした。また、同校の卒業生の多くは、好成績で一流高校、そして一流大学に進学していきました。
しかし、一方で、これらの教育プログラムには問題点もありました。その問題が明らかになったのは、最初の卒業生が大学進学した後のこと。多くの生徒が途中で大学を辞めてしまったのです。大学の教育課程を修了した者はわずか21%。さらに、この年の卒業生だけでなく、翌年の卒業生、翌々年の卒業生にも、同じような現象が生じたのでした。
子どもの教育における非認知能力の重要性
このような事態が起きた一因は、認知能力至上主義教育によって生じた「ゆがみ」にあります。前述した最初の卒業生を担当した教員のディヴィッド・レヴィンは、後に興味深い事実に気づいたといいます。
それは、「KIPPを経て大学に入学した生徒のうち大学で頑張ることができたのは、柔軟性や楽観性、自制心、粘り強さ、人づき合いにおける機敏さなど、知能以外の素質、つまり非認知能力を持ち合わせた生徒」だということ。
大学課程を無事に修了した生徒には、幼少時代から「見たいアニメがあっても宿題を優先できる」「つらいことがあっても立ち直れる」「教員や他の生徒と友好的な関係を築ける」といった特徴が見られたのです。
反対に、大学課程を修了できなかった生徒は、熱意にあふれたKIPPでの教育課程が終わり、いざ自分ひとりで学習をしなければならない状況に置かれたとき、そのやり方がわからず途方にくれてしまったのです。その原因として注目されているのは、非認知能力が十分に育っていなかったということでした。
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非認知能力を高めるために
以上のことからわかるのは、将来社会で活躍できる人になれるかどうかに大きく影響するのは、非認知能力を伸ばすための教育だということ。
もちろん、知能といった認知能力を高める教育も重要ではありますが、同時に、非認知能力を高めることに重きを置いた教育も必要なのです。
後編では、お子さんの非認知能力向上のために家庭でできることをご紹介します。